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オペラ座を交尾の映像で染めた「ステラ マッカートニー」、クリントンが駆け付けた「サカイ」、物語を秘めた「アレキサンダー マックイーン」

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パリコレもいよいよ残すところあと1日。8日目は、「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「サカイ(SACAI)」ブランドパロディ「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」がショーを行った。

 「ステラ マッカートニー」はオペラ座の壁や天井に動物たちが交尾をする映像を映し出した。座席には「これまでで一番サステイナブルなコレクション」とデザイナーからのメッセージ。動物と地球の命を大切につないでいこうとするステラのぶれない姿勢をユーモアを交えて伝えた。オーガニックコットンや再生ナイロンなどを用いた服は、サークルモチーフやスカラップヘムを多用し、甘くて優しい雰囲気。多く登場したデニムは100%オーガニックはアップサイクルだという。

 ショーは鮮やかな世界地図プリントのウエアと、地球儀をモチーフにしたバッグのルックでスタート。クリエイションの原点となったのは「1つの地球」というアイデア。さまざまな要素を再構築し、見事に調和させるハイブリッドはブランドの大きな特徴だが、これはさまざまな大陸、人種、要素がありながら、全ては1つの星の上にある地球と通じる。一見シフォンのボウタイブラウス、カーキパンツ、トレンチをスタイリングしたように見えるルックは、実は全てつながっているオールインワンだ。ツイードやニットにあしらわれた立体的なフリンジは、大陸をイメージしている。会場にも姿を見せたジョージ・クリントン(George Clinton)率いるファンくバンド、ファンデリックの楽曲「One Nation Under a Groove」のジャケ写をプリントしたTシャツが、そのメッセージをより明確に伝えた。

「サカイ」2020年春夏パリ・コレクション
アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)

 「一着一着にストーリーがある」と前書きされたリリースには42ルックの素材説明に加えて、いくつかは生産背景か記されている。オートクチュールのようにひとつひとつの服に力が注がれたコレクションだ。アイルランドに唯一残るリネンを使ったダマスク織の職人の仕事やセント・マーチン美術大学の学生との協業などが彩る。パフスリーブのドレスやタキシードジャケットなど得意とするアイテムがそろい奇抜さはないが心に響く仕上がりだ。

横浜市出身。東京女子大学卒業後、エドウインに入社。営業部で4年半、営業職を務める。日本繊維新聞社記者を経て2000年にINFASパブリケーションズ入社。記者として主にデザイナーズブランドの取材を担当。「ファッションニュース」編集長などを経て15年4月から現職。「毎日ファッション大賞」選考委員、「インターナショナル・ウールマーク・プライズ2020」のアドバイザリー・カウンシルを務める