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腕時計の基本、3大複雑機構のひとつ「ミニッツリピーター」とは?

音で時を知らせる「ミニッツリピーター」は、機械式時計ファンの垂涎の的。でも、その聞き方は? どうやって音を鳴らしているの? そんな疑問にお答えします。

音で時を知らせるミニッツリピーター

伝統的な機械式時計において、「トゥールビヨン」、「永久カレンダー」と並んで3大複雑機構のひとつに数えられるのが「ミニッツリピーター」です。

「リピーター(repearer)」とは、ひと言でいうと、音で時刻を知らせることができる機能のこと。その中でもミニッツリピーターは、分単位で知らせる細やかな精度を備えています。

ロマンティックな世界へ誘う美しいな音色、古い起源、そして、複雑な機構ゆえの希少性──。まさに時計愛好家たちの憧れの的といった魅力を備えるミニッツリピーターについて紹介します。

闇夜に時を知るための機構として誕生

世界で初めてリピーター機構を発明したのはイギリスの時計師で、1680年頃のことでした。電灯もなく、夜になると暗がりで時計の時刻を読むのに苦労していた当時には、音で時間を伝えてくれるリピーターの存在は画期的なものでした。

発明当時は鐘の付いた置き時計でしたが、1783年にアブラアン-ルイ・ブレゲが鐘に相当するパーツをリング状のゴングに置き換えたことで、懐中時計に収まるまでに小さくなりました。この方式が現在のリピーターウォッチの原型となっています。やがて精度も30分、15分などの大まかな単位から、1分単位に対応するミニッツリピーターへと発達していきました。


精緻な組み立てにより、美しい音色を叶える

リピーター(repearer)とは、オンデマンドの操作によって過ぎた時間が音で伝えられる機構であり、時間を復するということからその名が付いています。

操作をした瞬間が何時何分かを伝えるミニッツリピーターは、一般的には高音と低音の音を鳴らす2つのゴングと、それを打つハンマーの組み合わせによって、「時単位」「15分単位」「分単位」の3種類の時間が表されます。低音が「時」、高音と低音の交互が「15分」、高音が「分」の音です。

例えば、以下のムービーの最後のシーン。まず「時」を表すゴングが12回、次いで「15分」の2音の組み合わせが2回、さらに「分」のゴングが6回鳴っています。それにより知らされる時間は、12時36分(15×2+6)という事になります。

なお、ミニッツリピーターはゴングとハンマーが2組ありますが、これが3組となる「カリヨン」、4組以上を備える「ウエストミンスター」もあります。リピーター製造には高度な時計技術に加え、小さく繊細なゴングでできるだけ大きな音を響かせる力学の原理・音響の知識なども必要です。

また、パーツの数が増えるほど、音の調整には困難を極めます。その複雑さゆえに製造が難しくなるリピーターは、必然的に高価となり、誕生した時代には上流階級の貴族たちにとって趣味性の強い憧れの存在でした。

現在でも時計技術の最高峰に君臨し、時計愛好家たちの垂涎の的であり続けています。